ソノタノコト
2008年01月21日
てのひら怪談2だだ洩れ感想20
【未練の檻/都田万葉】
女の怖さ:★★★★
濃厚さ:★★★☆
安定感:★★★
女のどろどろテーマに加えてこう濃い文章だと、読んでいて少し息切れしてしまうきらいがある。けっして悪い作品ではないしガジェットもよいとは思うのだけれど、人によっては敬遠されてしまうのではないかなあと、そのへん少し残念に思う。たとえばきつくつけられたボタン描写があるのだから次の文章で説明しすぎることはないと思うし、そういう意味でももう少し抑えた文章のがよかったのじゃないかなあ。
【水恋鳥/阿丸まり】
切なさ:★★★
怪談度:★★★
柔らかさ:★★★☆
水恋鳥という、真っ赤な自分の嘴が怖ろしくて水が飲めないという鳥に焦点を宛てて描写しているのだけれど、その裏側に三谷のばあちゃんとばあちゃんをいじめ殺した息子、という構図が浮かび上がってくるところがうまい。いじめ殺されてもなお息子を案じて出てくるばあちゃんの姿が切ないし、方言もその雰囲気を守り立てるのに効果的だと感じた。
【呼び止めてしまった/根多加良】
ねじれ:★★★★
奇抜さ:★★★★
不安感:★★★
超短篇のねたかん。彼の文章は狙っているのかそうでないのか日本語がぎこちないことが多くて、そのざりざりとした感触が時にとてもよい効果を生むのだけれど、この作品もそのざりざり感がよい効果を挙げていると思う。だいたい状況からして奇妙にねじれているし。「ゲタゲタガハガハ」という擬声語も印象的。でも、何で「ゲタゲタガハガハ」で統一しなかったのかなあ。最後の笑い声だけ「ゲラゲラ」なのが、何か気になる。惜しい気がする。
【シャボン魂/岩里藁人】
切なさ:★★★★
美しさ:★★★
柔らかさ:★★★
これは読み返すたびに味が深まってゆく作品だなあ。シャボン玉=魂という構図は珍しくはないと思うのだけれど、そういう馴染みやすい感じだからこそ訴えかけてくるものも大きいのかな。少女へのキスは一見そこだけ異質な印象を受けるのだけれど、この部分があるからこそラストでのイメージがより膨らむし、たんなる予定調和なものから一歩脱け出たものになっているのだと思う。
【赤き丸/クジラマク】
奇抜さ:★★★★
不安感:★★★★
奇妙さ:★★★★
冒頭を飾るにふさわしい素晴らしい作品だと思う。ブリーフ一枚のピエロと、ピエロが赤い鼻をぽんぽんと押しつけてゆくという情景がいちいち素敵だし、それを語る口調が淡々としているからこそよけいに不気味さが増す。女性のピエロもブリーフ一枚らしいのは逆にいいと私は思うなあ。奇妙に崩れている世界で、そこだけ常識的でも何か変だし。仮にみんな素っ裸だったとしても、魅力が半減することはないはずだ。
ということで100作全部の感想終わり。お粗末さまでした。どんなへっぽこ感想であれ、書くからには変に褒めるだけじゃやる意味ないだろうと思ったので作品によってはけっこう辛辣になってしまったものもあるかもしれません。でも私はそう感じたわけなので訂正する気はありませんし、評価なんて人によって様々ですから、「そう感じる人も居るのね」くらいで受け流してくれればよいのじゃないかと思います。少なくとも私は自分の作品のここが駄目だったと忌憚なく指摘してもらえるほうが嬉しいです。
ただ、自分の書いたことにはきちんと責任は持ちたいので、もしも「あまりにもこれはひどい、不快になる」とかいう意見があればメッセージなり何なり戴ければと思います。
って、こういうことは最初に書いたほうがよかったんじゃないか。まあいっか。
女の怖さ:★★★★
濃厚さ:★★★☆
安定感:★★★
女のどろどろテーマに加えてこう濃い文章だと、読んでいて少し息切れしてしまうきらいがある。けっして悪い作品ではないしガジェットもよいとは思うのだけれど、人によっては敬遠されてしまうのではないかなあと、そのへん少し残念に思う。たとえばきつくつけられたボタン描写があるのだから次の文章で説明しすぎることはないと思うし、そういう意味でももう少し抑えた文章のがよかったのじゃないかなあ。
【水恋鳥/阿丸まり】
切なさ:★★★
怪談度:★★★
柔らかさ:★★★☆
水恋鳥という、真っ赤な自分の嘴が怖ろしくて水が飲めないという鳥に焦点を宛てて描写しているのだけれど、その裏側に三谷のばあちゃんとばあちゃんをいじめ殺した息子、という構図が浮かび上がってくるところがうまい。いじめ殺されてもなお息子を案じて出てくるばあちゃんの姿が切ないし、方言もその雰囲気を守り立てるのに効果的だと感じた。
【呼び止めてしまった/根多加良】
ねじれ:★★★★
奇抜さ:★★★★
不安感:★★★
超短篇のねたかん。彼の文章は狙っているのかそうでないのか日本語がぎこちないことが多くて、そのざりざりとした感触が時にとてもよい効果を生むのだけれど、この作品もそのざりざり感がよい効果を挙げていると思う。だいたい状況からして奇妙にねじれているし。「ゲタゲタガハガハ」という擬声語も印象的。でも、何で「ゲタゲタガハガハ」で統一しなかったのかなあ。最後の笑い声だけ「ゲラゲラ」なのが、何か気になる。惜しい気がする。
【シャボン魂/岩里藁人】
切なさ:★★★★
美しさ:★★★
柔らかさ:★★★
これは読み返すたびに味が深まってゆく作品だなあ。シャボン玉=魂という構図は珍しくはないと思うのだけれど、そういう馴染みやすい感じだからこそ訴えかけてくるものも大きいのかな。少女へのキスは一見そこだけ異質な印象を受けるのだけれど、この部分があるからこそラストでのイメージがより膨らむし、たんなる予定調和なものから一歩脱け出たものになっているのだと思う。
【赤き丸/クジラマク】
奇抜さ:★★★★
不安感:★★★★
奇妙さ:★★★★
冒頭を飾るにふさわしい素晴らしい作品だと思う。ブリーフ一枚のピエロと、ピエロが赤い鼻をぽんぽんと押しつけてゆくという情景がいちいち素敵だし、それを語る口調が淡々としているからこそよけいに不気味さが増す。女性のピエロもブリーフ一枚らしいのは逆にいいと私は思うなあ。奇妙に崩れている世界で、そこだけ常識的でも何か変だし。仮にみんな素っ裸だったとしても、魅力が半減することはないはずだ。
*
ということで100作全部の感想終わり。お粗末さまでした。どんなへっぽこ感想であれ、書くからには変に褒めるだけじゃやる意味ないだろうと思ったので作品によってはけっこう辛辣になってしまったものもあるかもしれません。でも私はそう感じたわけなので訂正する気はありませんし、評価なんて人によって様々ですから、「そう感じる人も居るのね」くらいで受け流してくれればよいのじゃないかと思います。少なくとも私は自分の作品のここが駄目だったと忌憚なく指摘してもらえるほうが嬉しいです。
ただ、自分の書いたことにはきちんと責任は持ちたいので、もしも「あまりにもこれはひどい、不快になる」とかいう意見があればメッセージなり何なり戴ければと思います。
って、こういうことは最初に書いたほうがよかったんじゃないか。まあいっか。
てのひら怪談2だだ洩れ感想19
【石に潜む/白ひびき】
奇妙さ:★★★
もやもや感:★★★
やるせなさ:★★★
私は虫入り琥珀が欲しいです。そのうち買いそう……一万あれば買える。これは800字で書くにはやや窮屈だったのじゃないかという印象があるなあ。石についての描写もそうだし、全体的に筋を追うのでいっぱいいっぱいという感じで、どうにも具体的なイメージが湧きにくい。結果とても味の薄いものになってしまっている気がする。龍がどうにもミニマムサイズっぽいのも迫力に欠けるし気にかかるところ。
【阿吽の衝突/暮木椎哉】
可愛さ:★★★☆
ポップ度:★★★
奇妙さ:★★★
まずタイトルがうまいよなあ。で、作品を読んでやられたなあという感じがした。情景を想像すると実にコミカルで面白味があってよい。描写や雰囲気作りも叮嚀にされているところも好印象かな。まわりの住民も「ああまたやっているなあ」という感じなんだろうな。阿吽の衝突の理由を母が何を悩むこともなくするっと語るところが、実に深い。
【石がものいう話/高橋史絵】
女の怖さ:★★★
教訓:★★★
雰囲気:★★★
こういう形式の話はやはり怪談ととても相性がよいのだろうな。後半妙に説教臭くなるところも含めてカラーとしていいのかな、とは思う。ただ個人的には、何か周氏へ落ちた火柱からあとのくだりが私怨によって生じている印象が強すぎるのが馴染まない。鬼神が高らかに笑いながら天空に上ってゆくところとかよいと思うのだけれど、漂う説教臭さと私怨を同列に扱えないのかもしれない。石の大きさもちょっと気になる。
【赤地蔵/狩野いくみ】
安定感:★★★★
壮絶さ:★★★★
奇抜さ:★★★
これはとてもよかった。文章も巧い方だし、要所要所の擬音語がイメージを膨らませてくれてよい味を出していると思った。多用しすぎると陳腐になるきらいがあるけれど、この作品ではそういうこともなく。地蔵も怖けりゃ赤子も怖い。このうち鬼なのは片方だけだけれど、状況を見る限りじゃすぐにどっちと判断出来ないところがまたポイントだろうな。揺るぎない正義なんていうものには疑問を感じるたちなので、最後まで「どちらが鬼だったか」をぼかしておくという試みは私的には好き。
【深夜の騒音/宮間波】
不安定感:★★★
物寂しさ:★★★
もやもや感:★★★
怪談か怪談でないかでいえばこれは怪談でないと私は思う。もしこれに怪談足りえている部分があるとすれば、それは、
要するに怪談話のなかに混じっているから読み手としても半ば好意的にそのように解こうとするのであって、そういう意味ではこの作品は独立して成立しているとは言えないのじゃないかと思うわけで、もっと怪異を強めるなりバイクの音について言及するなりあればよかったのになあと思う。迷惑ならばやっぱり警察に通報すべきだと思うのに、何でこの主人公はどこまでも他人任せなのかなあ。
奇妙さ:★★★
もやもや感:★★★
やるせなさ:★★★
私は虫入り琥珀が欲しいです。そのうち買いそう……一万あれば買える。これは800字で書くにはやや窮屈だったのじゃないかという印象があるなあ。石についての描写もそうだし、全体的に筋を追うのでいっぱいいっぱいという感じで、どうにも具体的なイメージが湧きにくい。結果とても味の薄いものになってしまっている気がする。龍がどうにもミニマムサイズっぽいのも迫力に欠けるし気にかかるところ。
【阿吽の衝突/暮木椎哉】
可愛さ:★★★☆
ポップ度:★★★
奇妙さ:★★★
まずタイトルがうまいよなあ。で、作品を読んでやられたなあという感じがした。情景を想像すると実にコミカルで面白味があってよい。描写や雰囲気作りも叮嚀にされているところも好印象かな。まわりの住民も「ああまたやっているなあ」という感じなんだろうな。阿吽の衝突の理由を母が何を悩むこともなくするっと語るところが、実に深い。
【石がものいう話/高橋史絵】
女の怖さ:★★★
教訓:★★★
雰囲気:★★★
こういう形式の話はやはり怪談ととても相性がよいのだろうな。後半妙に説教臭くなるところも含めてカラーとしていいのかな、とは思う。ただ個人的には、何か周氏へ落ちた火柱からあとのくだりが私怨によって生じている印象が強すぎるのが馴染まない。鬼神が高らかに笑いながら天空に上ってゆくところとかよいと思うのだけれど、漂う説教臭さと私怨を同列に扱えないのかもしれない。石の大きさもちょっと気になる。
【赤地蔵/狩野いくみ】
安定感:★★★★
壮絶さ:★★★★
奇抜さ:★★★
これはとてもよかった。文章も巧い方だし、要所要所の擬音語がイメージを膨らませてくれてよい味を出していると思った。多用しすぎると陳腐になるきらいがあるけれど、この作品ではそういうこともなく。地蔵も怖けりゃ赤子も怖い。このうち鬼なのは片方だけだけれど、状況を見る限りじゃすぐにどっちと判断出来ないところがまたポイントだろうな。揺るぎない正義なんていうものには疑問を感じるたちなので、最後まで「どちらが鬼だったか」をぼかしておくという試みは私的には好き。
【深夜の騒音/宮間波】
不安定感:★★★
物寂しさ:★★★
もやもや感:★★★
怪談か怪談でないかでいえばこれは怪談でないと私は思う。もしこれに怪談足りえている部分があるとすれば、それは、
↓こんな感じの心理なんじゃないかと。

2008年01月17日
てのひら怪談2だだ洩れ感想18
【もんがまえ/行一震】
薄暗さ:★★★
女の怖さ:★★☆
シュールさ:★★★
「開」の文字が「闘」に変化して奥さんに夫との闘いを仕向ける構造や着想は面白いと思う。でも、いかんせん奥さんが夫への不満を募らせてゆく、謂わば肝であるシーンがどうにも薄い印象。日常的に抱えている不満がただ書き連ねられているだけで、とても闘うところまでは達していないと思う。不満が積み重なって最後にどかんとならなければいけないのに、「お腹が出てきたよ。」で終わっちゃ、口調からして何だか愛に溢れていて、せっかくの闘志も消えてしまってんじゃないかと思うんだ。
【厄/松本楽志】
グロ度:★★★
不条理度:★★★★
奇抜さ:★★★★
超短篇の星・楽志さん。整った静謐な世界を書かれるイメージが強かったので、この作品にはちょっとびっくりしたというのが個人的な感想。イメージ先行の話だと思うのだけれど「歯ぎしり団地」や「鉄管子」などの魅力的で強烈な言葉で、ぐいっと惹きこまれる感じ。イメージ先行なのだけれど言葉そのものの怖さがそこにあるというか。それはタイトルにもなっている「厄」という字ひとつとってみても。ラスト一文が厭すぎる。
【幽霊画の女/田辺青蛙】
皮肉:★★★
怪談度:★★★☆
とっぽさ:★★★★
兄弟の会話・言い廻しが非常にわざとらしくて容易に真意を汲めない感じなのがよいなあ。ほかにも冒頭からしてすずめを煮ていたり、幽霊画と交わる展開といい、荒唐無稽なことばかり起こるのだけれどそれがこの作品の魅力なんだろう。そういう意味合いでは幽霊画の女とのあいだに生まれたと思われる赤子に情が移ってしまうラストは落ちすぎている感も否めないのだけれど、ちょっと皮肉めいてもいて、これはこれでいいかなとも思う。
【デウス・エクス・リブリス/君島慧是】
美しさ:★★★★
広がり:★★★★
安定感:★★★★
当然の筆力。筆も話の運びも巧いよなあ。強いて言うならばどちらかといえば怪談よりもファンタジー寄りな気がするのが玉に瑕かとも思うのだけれども、描かれている世界が魅力的であることには何ら変わりはないし、素直に愉しめる作品だった。派手でなく抑えられた文体に豊かなイメージが絡んでとても味わい深い雰囲気になっていると思う。この味わいは作者の手腕によるところがもちろん大きいから、誰にでも書ける世界じゃない。
薄暗さ:★★★
女の怖さ:★★☆
シュールさ:★★★
「開」の文字が「闘」に変化して奥さんに夫との闘いを仕向ける構造や着想は面白いと思う。でも、いかんせん奥さんが夫への不満を募らせてゆく、謂わば肝であるシーンがどうにも薄い印象。日常的に抱えている不満がただ書き連ねられているだけで、とても闘うところまでは達していないと思う。不満が積み重なって最後にどかんとならなければいけないのに、「お腹が出てきたよ。」で終わっちゃ、口調からして何だか愛に溢れていて、せっかくの闘志も消えてしまってんじゃないかと思うんだ。
【厄/松本楽志】
グロ度:★★★
不条理度:★★★★
奇抜さ:★★★★
超短篇の星・楽志さん。整った静謐な世界を書かれるイメージが強かったので、この作品にはちょっとびっくりしたというのが個人的な感想。イメージ先行の話だと思うのだけれど「歯ぎしり団地」や「鉄管子」などの魅力的で強烈な言葉で、ぐいっと惹きこまれる感じ。イメージ先行なのだけれど言葉そのものの怖さがそこにあるというか。それはタイトルにもなっている「厄」という字ひとつとってみても。ラスト一文が厭すぎる。
【幽霊画の女/田辺青蛙】
皮肉:★★★
怪談度:★★★☆
とっぽさ:★★★★
兄弟の会話・言い廻しが非常にわざとらしくて容易に真意を汲めない感じなのがよいなあ。ほかにも冒頭からしてすずめを煮ていたり、幽霊画と交わる展開といい、荒唐無稽なことばかり起こるのだけれどそれがこの作品の魅力なんだろう。そういう意味合いでは幽霊画の女とのあいだに生まれたと思われる赤子に情が移ってしまうラストは落ちすぎている感も否めないのだけれど、ちょっと皮肉めいてもいて、これはこれでいいかなとも思う。
【デウス・エクス・リブリス/君島慧是】
美しさ:★★★★
広がり:★★★★
安定感:★★★★
当然の筆力。筆も話の運びも巧いよなあ。強いて言うならばどちらかといえば怪談よりもファンタジー寄りな気がするのが玉に瑕かとも思うのだけれども、描かれている世界が魅力的であることには何ら変わりはないし、素直に愉しめる作品だった。派手でなく抑えられた文体に豊かなイメージが絡んでとても味わい深い雰囲気になっていると思う。この味わいは作者の手腕によるところがもちろん大きいから、誰にでも書ける世界じゃない。
2008年01月15日
てのひら怪談2だだ洩れ感想17
【焼き蛤/金子みづは】
温かさ:★★★☆
柔らかさ:★★★
絆:★★★
これも優しさに溢れた怪談という印象。安定した筆力があるので安心して読める一作かと。とりわけ会話文が生き生きとしていて、作品に広がりが出ているんじゃないかなあと思った。ぷっくり太った焼き蛤がおいしそうで、ものすごく贅沢ではないのだけれどちょっとした仕合わせみたいなところが、どうやら家族に遠慮して叔母の家に出るらしい父親にとても似合っており、微笑ましい。
【白髪汁/間倉巳堂】
グロ度:★★★
不安感:★★★
奇抜さ:★★★☆
味噌汁と異物って、どうしてこんなに合うのだろう。食べ物のなかに人体の一部が混入しているだけではなくて、老人丸ごと這入っているところがいいな。人肉食べる人はほとんど居ないだろうから、これは大半の人が間違いなく嫌悪感を抱くだろうな。冒頭の「みそ汁の中に、……」の一文もこのへんをうまくフォローしていると思うし。しかし髪の毛の量がちょっと多いかな。そんなにごっそりあったら、最初からいくらか貝からはみ出しているんじゃないか。「ふえるわかめちゃん」じゃあるまいし。
【磯牡蠣/有井聡】
グロ度:★★★☆
薄暗さ:★★★★
奇妙さ:★★★
ですます調の淡々とした語りが怖さをより引き立てていてうまい。バカ牡蠣が牛の頭ほどもあって目玉があって、ぐるんっと廻って見据えられたらそりゃ漁もしなくなるさ。眠っていた怪異を起こしてしまったという取り返しのつかなさが窺える印象的なシーン。自分を取った人間を牡蠣がきちんと認識しているところがまた厭だ。その牡蠣を観光客に振る舞い、何も知らない観光客が「これは、旨い」と喰う光景にぞっとなる。地元の人たちがごく自然にそれを観光客に振る舞おうとする人間の心の暗さにもぞっとなる。
【灯台/牧ゆうじ】
シュールさ:★★★☆
雰囲気:★★★
もやもや感:★★★
何だろう、ものすごく取り残されている感じがするのは、イメージばかりが先行していて今ひとつ整理されきっていない文章がそれを追えていないから、かなあ。描かれている情景は美しいのだけれど、味やにおいをいっさい感じることが出来ない。それはシュールさを引きだす点ではすごくプラスに作用しているとは思うのだけれど、掴みどころのなさもまたそこから生まれているようにも思うし。何だか非常に惜しい感じがする。
【のぼれのぼれ/仁木一青】
可愛さ:★★★★
奇妙さ:★★★
柔らかさ:★★★☆
好きな作品。子供たちと怪異との駆け引きが面白い。登場人物が子供だからこその無邪気さが作品にいい味を出しているのじゃないかとも思う。視野が広いからちょっと不可思議な現象でもさほどの抵抗なく受け容れられて、小池君たちももちろん怪異を起こしているほうも遊び感覚でしかないんだろうな。「あっ」と慌てたように発せられた声が、そのへんをよく表していると思う。
温かさ:★★★☆
柔らかさ:★★★
絆:★★★
これも優しさに溢れた怪談という印象。安定した筆力があるので安心して読める一作かと。とりわけ会話文が生き生きとしていて、作品に広がりが出ているんじゃないかなあと思った。ぷっくり太った焼き蛤がおいしそうで、ものすごく贅沢ではないのだけれどちょっとした仕合わせみたいなところが、どうやら家族に遠慮して叔母の家に出るらしい父親にとても似合っており、微笑ましい。
【白髪汁/間倉巳堂】
グロ度:★★★
不安感:★★★
奇抜さ:★★★☆
味噌汁と異物って、どうしてこんなに合うのだろう。食べ物のなかに人体の一部が混入しているだけではなくて、老人丸ごと這入っているところがいいな。人肉食べる人はほとんど居ないだろうから、これは大半の人が間違いなく嫌悪感を抱くだろうな。冒頭の「みそ汁の中に、……」の一文もこのへんをうまくフォローしていると思うし。しかし髪の毛の量がちょっと多いかな。そんなにごっそりあったら、最初からいくらか貝からはみ出しているんじゃないか。「ふえるわかめちゃん」じゃあるまいし。
【磯牡蠣/有井聡】
グロ度:★★★☆
薄暗さ:★★★★
奇妙さ:★★★
ですます調の淡々とした語りが怖さをより引き立てていてうまい。バカ牡蠣が牛の頭ほどもあって目玉があって、ぐるんっと廻って見据えられたらそりゃ漁もしなくなるさ。眠っていた怪異を起こしてしまったという取り返しのつかなさが窺える印象的なシーン。自分を取った人間を牡蠣がきちんと認識しているところがまた厭だ。その牡蠣を観光客に振る舞い、何も知らない観光客が「これは、旨い」と喰う光景にぞっとなる。地元の人たちがごく自然にそれを観光客に振る舞おうとする人間の心の暗さにもぞっとなる。
【灯台/牧ゆうじ】
シュールさ:★★★☆
雰囲気:★★★
もやもや感:★★★
何だろう、ものすごく取り残されている感じがするのは、イメージばかりが先行していて今ひとつ整理されきっていない文章がそれを追えていないから、かなあ。描かれている情景は美しいのだけれど、味やにおいをいっさい感じることが出来ない。それはシュールさを引きだす点ではすごくプラスに作用しているとは思うのだけれど、掴みどころのなさもまたそこから生まれているようにも思うし。何だか非常に惜しい感じがする。
【のぼれのぼれ/仁木一青】
可愛さ:★★★★
奇妙さ:★★★
柔らかさ:★★★☆
好きな作品。子供たちと怪異との駆け引きが面白い。登場人物が子供だからこその無邪気さが作品にいい味を出しているのじゃないかとも思う。視野が広いからちょっと不可思議な現象でもさほどの抵抗なく受け容れられて、小池君たちももちろん怪異を起こしているほうも遊び感覚でしかないんだろうな。「あっ」と慌てたように発せられた声が、そのへんをよく表していると思う。
2008年01月14日
てのひら怪談2だだ洩れ感想16
【女/武田若千】
奇妙さ:★★★★
ユーモア:★★★☆
シュールさ:★★★
この作品は「くほう」と、女が電柱の出っ張ったところに引っ掛けられたところに尽きるな。たぶんこの主人公はふだんから視えている人で、ちょっとやそっとのことでは驚かないのだろうな。この女は特に、部屋の真ん中でぐるぐる廻っていたり台所の床を転がっていたりと、およそ一般的に連想される通常の霊っぽくない。それが少しの嫌悪感を抱く以外には動じない主人公と合わさっていい味が出ているなあと思った。
【気配/小林修】
不安感:★★★
もやもや感:★★★
奇妙さ:★★★
何だか消化不良な感じだなあ。タイトルからして「それ」自体は敢えてぼかしてあるのだろうけれど、いろいろな要素がそのまま投げだされてしまっている印象。今ひとつ掴みにくい。さらにこの主人公いろいろと悠長すぎやしないか。取り敢えず目が覚めて浮いていて下に眠っている自分の姿があった場合、疑問を持つ前に驚けよと思うし、「それ」がだんだんとアパートの部屋に近づいてくるのが判るのならば、「それ」が誰か云々より状況をどうにかしなければとかは考えないのだろうか。自分の身の危険とかは心配していない感じなのだけれど、別にこういう状況に慣れているわけでもなさそうだしなあ。「しまった」とか思っているし。ここへきて何が「しまった」なのかも少し引っ掛かる。
【客/我妻俊樹】
安定感:★★★★★
美しさ:★★★★
怪談度:★★★☆
これは巧すぎてもはやずるいくらい。怪異としてはオーソドックスだし全然派手でもないけれど、ぷんと匂いたつ。とりわけ紙のように薄く角度によってはほとんど壁の模様に紛れてしまう女の描写が秀逸だと思う。場や道具の使い方もうまくて、計ったように目の前で切れる電話のベルとかこれ以上なくよいなあ。戻ってきたときにはすでに見えなくなっていた女の姿を探して目を凝らすところも印象的。その前の、「私の気の回らないところで、母が……」の一文が効果的に作用していると思うし。好きな作品。
【二〇〇七年問題/久遠平太郎】
ユーモア:★★★☆
シュールさ:★★★
奇妙さ:★★★
ああ、なるほど。とりわけ仕事第一の人が多い世代だからこれはありうるだろうなあ。着眼点がユニーク。おそらく再就職先がうまい具合に見つかれば生霊も出なくなるのだろうけれど、それでも根本的に解決したことにはならないよな。この調子でどんどん増えていったら困るだろうなあ。これからはもっと家族と一緒に過ごすことを考えてみてもいいんじゃないか。ところでタイトル、途中までずっと「二〇〇七年度問題」だと思っていたのだけれど、「二〇〇七年問題」だったんだな。
【食卓の光景/添田健一】
温かさ:★★★☆
絆:★★★☆
美しさ:★★★
優しさに溢れた怪談だなあ。お父さんを気遣う家族の姿が美しくて、きっととても仲睦まじい家族なのだろうなあと想像出来る。弟が仏壇に飾ってあった遺影を隠すあたりが特に好きだ。舞台が朝の食卓であることもまた違和感なく雰囲気を出していてよい感じ。そういう気遣いに溢れた日常の何気ない雰囲気から大きく離れないで終わってほしかったので、ラストの「大いなるもの」がちょっと大袈裟でそぐわない気がしたかなあ。
奇妙さ:★★★★
ユーモア:★★★☆
シュールさ:★★★
この作品は「くほう」と、女が電柱の出っ張ったところに引っ掛けられたところに尽きるな。たぶんこの主人公はふだんから視えている人で、ちょっとやそっとのことでは驚かないのだろうな。この女は特に、部屋の真ん中でぐるぐる廻っていたり台所の床を転がっていたりと、およそ一般的に連想される通常の霊っぽくない。それが少しの嫌悪感を抱く以外には動じない主人公と合わさっていい味が出ているなあと思った。
【気配/小林修】
不安感:★★★
もやもや感:★★★
奇妙さ:★★★
何だか消化不良な感じだなあ。タイトルからして「それ」自体は敢えてぼかしてあるのだろうけれど、いろいろな要素がそのまま投げだされてしまっている印象。今ひとつ掴みにくい。さらにこの主人公いろいろと悠長すぎやしないか。取り敢えず目が覚めて浮いていて下に眠っている自分の姿があった場合、疑問を持つ前に驚けよと思うし、「それ」がだんだんとアパートの部屋に近づいてくるのが判るのならば、「それ」が誰か云々より状況をどうにかしなければとかは考えないのだろうか。自分の身の危険とかは心配していない感じなのだけれど、別にこういう状況に慣れているわけでもなさそうだしなあ。「しまった」とか思っているし。ここへきて何が「しまった」なのかも少し引っ掛かる。
【客/我妻俊樹】
安定感:★★★★★
美しさ:★★★★
怪談度:★★★☆
これは巧すぎてもはやずるいくらい。怪異としてはオーソドックスだし全然派手でもないけれど、ぷんと匂いたつ。とりわけ紙のように薄く角度によってはほとんど壁の模様に紛れてしまう女の描写が秀逸だと思う。場や道具の使い方もうまくて、計ったように目の前で切れる電話のベルとかこれ以上なくよいなあ。戻ってきたときにはすでに見えなくなっていた女の姿を探して目を凝らすところも印象的。その前の、「私の気の回らないところで、母が……」の一文が効果的に作用していると思うし。好きな作品。
【二〇〇七年問題/久遠平太郎】
ユーモア:★★★☆
シュールさ:★★★
奇妙さ:★★★
ああ、なるほど。とりわけ仕事第一の人が多い世代だからこれはありうるだろうなあ。着眼点がユニーク。おそらく再就職先がうまい具合に見つかれば生霊も出なくなるのだろうけれど、それでも根本的に解決したことにはならないよな。この調子でどんどん増えていったら困るだろうなあ。これからはもっと家族と一緒に過ごすことを考えてみてもいいんじゃないか。ところでタイトル、途中までずっと「二〇〇七年度問題」だと思っていたのだけれど、「二〇〇七年問題」だったんだな。
【食卓の光景/添田健一】
温かさ:★★★☆
絆:★★★☆
美しさ:★★★
優しさに溢れた怪談だなあ。お父さんを気遣う家族の姿が美しくて、きっととても仲睦まじい家族なのだろうなあと想像出来る。弟が仏壇に飾ってあった遺影を隠すあたりが特に好きだ。舞台が朝の食卓であることもまた違和感なく雰囲気を出していてよい感じ。そういう気遣いに溢れた日常の何気ない雰囲気から大きく離れないで終わってほしかったので、ラストの「大いなるもの」がちょっと大袈裟でそぐわない気がしたかなあ。